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雑 記

「西色綺譚」管理人の徒然メモ帳

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魔法使いの立ち話

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「聞いたわよ!ローレンス!エドワーズ家の怪事件を解決したの、あなただったのね!」
 小雪が降り始めた街のとある坂道を下っていると、聞き覚えのある声が、石畳に足音を叩きながら、背後からローレンスの足を止めた。
肩越しで、愛猫エリザベスがため息をつく。
「ローレンス、またいらっしゃったわよ…」
 人間のように右手を額にあてて、呆れたように言うその声は妙齢の女性の声で、どこかつややかだった。長い尻尾が揺れる。
どこから見ても猫の姿をしたエリザベスが、人間の言葉を解すのを、ローレンスは驚いたようすもせず、帽子の下で苦笑をした。ほかの人間では腰を抜かすどころの騒ぎではないだろう。
彼女…エリザベスはローレンスのケット・シーと呼ばれるに地魔して、ローレンスの使い魔であるからだ。ケット・シーは妖精猫とも呼ばれ、契約した魔法使いに仕えていることが多い。
エリザベスもその例にもれず、ローレンスの使い魔をしている。
ゆえに、魔法使いであるローレンスにとって、彼女と会話など、日常茶飯事のことだ。
そして、エリザベスの今の反応もお馴染みのもので、猫らしくにゃあーとなくととても愛らしかった。
「ちょっと!ローレンス!聞いているの?聞いてないでしょ!」
 苦笑を自分に向けたものだと勘違いをしたのか、のんびりと坂を下りるローレンスに、背後から追いついた人物は文句を言った。
長い赤毛に粉雪を付け、薄紅色のファーの帽子と同じ色のケープを着こんだその人物は、ローレンスの前に回り込むように飛び出すと、頬を膨らませて抗議をした。
睨みつける瞳の薄紫の色は、ローレンスに自宅のハーブ畑のラベンダーを思い出させた。足元には、真っ黒な大型犬が付いてきており、心配気に濡れた鼻をひくつかせていた。
「やあ、クラリッサとルーク。今日も元気そうだね」
「人の質問に答えなさないよ!」
「ごきげんよう、ローレンス、エリー」
 丁寧にあいさつを返したのは、クラリッサと呼ばれた少女ではなく、彼女が連れている犬、ルークであった。
十代後半といったところだろうか、若々しく落ち着いた青年の声が静かな石畳に響く。
真っ黒な毛皮の中で、つぶらな黒い瞳を眩しそうに細め、ローレンスとエリー…エリザベスに向ける。
ルークはクー・シーと呼ばれる地魔で、妖精犬の別名を持つクラリッサの使い魔だ。
クー・シーは巨大な緑の犬だと伝承ではされているが、ルークはどこからどう見ても大型の賢そうな黒犬にしか見えなかった。礼儀正しく挨拶をする妖精犬に、妖精猫は合わせるように優雅にお辞儀をした。
「ごきげんよう、ルーク。今日は、とても寒いわね。それにしても貴方のご主人は煩いわね」
 エメラルドの大きな瞳を瞬かせながらエリザベスはローレンスの肩越しに声をかけると、ルークは小さく笑う。
「元気が良くていいでしょ」
「どこが?まったく、いつも大騒ぎで私はいやだわ。ねえ、ローレンス。貴方もそう思うでしょ?」
「元気が良いのは、クラリッサの良いところだと思うよ」
まるで茶飲み仲間のような犬と猫の奇妙な会話に話を振られたローレンスは何食わぬ顔で話しに加わっていった。
しかし、それが気に入らないクラリッサはさらに声を上げた。
「ローレンス!さっきから、無視しないでよ!ルークは、どうして私より先にローレンスと話しているの!私が先に呼びかけたのに!」
「ご、ごめん」
「クラリッサ、ごめん、ごめん。聞いていなかったわけではないんだよ」
 文句を言われて、困ったように耳を伏せたルークを助けるようにローレンスは言った。
「もう、どうだか!」
 不満を口にしているが、顔を上げた時の表情が一瞬輝いたのをローレンスは見逃さなかった。相手にされたのが嬉しかったようだ。
その様子が仔犬のようで、ローレンスは可愛いなあと思う。
「で、ご用件はなんだったかな?」
「やっぱり聞いていないじゃない…」
 のんびりと尋ねれば、脱力したようにクラリッサは言った。
あからさまに肩を落とすその姿にローレンスは苦笑いをした。やはり仔犬のようだ。
「あいかわらず、喜怒哀楽が激しくて疲れる子ね~」
 エリザベスが率直な感想を吐く。
「エリー、さっきからひどくない?」
「本当のことを言ったまでよ。名家のお嬢様なのだから、少しはお行儀よくできないのかしらとか、全然思ってないわよ~」
「口に出てるし。猫かっぶりのエリーに言われたくないわ」
 優雅な見た目と声に反して、毒を吐くエリザベスに、クラリッサは頬を引きつかせる。だが、負ける気はないらしく、すかさず言いかえす。
「私は猫だからいいんです」
『はは、当たってる…!』
「二人とも!笑ってないで、加勢しなさいよ!」
「ローレンスは私の味方よねー?」
『は、はいっ!』
 他人事のように笑っていたローレンスとルークだったが、少女と雌猫に次々に抗議をされて、背筋を正す。
一人と一匹の声が静かな街に響いて消えていった。
「分かればよろしい!」
「って、また、脱線してるじゃないの!」
「ああ、そうでした、クラリッサ。ご用件は何でしたか?」
「またそこからっ!?」
「うるさいわね~」
「クラリッサ、少し落ち着いて話をしようよ~」
 雪は次第に大きく、増えていったが、彼らの会話はますます熱を帯びていきそうな様子であった。


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たまには小話。
見切り発車で書いて収集がつかなくなたので、無理やり終わらせました。
 

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